2014-07-01

カンボジア前半

逗子人のカンボジア旅行記1

 夜の風は日に日に冷たさを増し、今回の目的地を睨んで軽装の私はポケットから手を出せずに歩いた。深夜1時、羽田空港からのバンコク行きに乗る。逗子人の海外旅行に便利な時代がきたものだ。用意した日程は5日間。暑い国の訪問に大きな荷物は必要ない。デイパック一つを機内に持ち込み、映画も機内食も忘れ、ただ明日からのハードスケジュールに備えて睡眠をとる。
 早朝、まだ暗いスワンナプームに着陸する。バンコクでの乗り継ぎは6時間ほどだ。一度市内に出ることも考えたが、洪水がどこまで交通機関を乱しているかわからない。出発まで大人しく空港にとどまる。
 翌朝のバンコク航空でシェムリアップへ。独占路線だけに運賃が高止まりしているが、陸路で10時間かけての入国と天秤にかけ、今回は空路を選んだ。割安な航空券は出回っていなかったため、正規割引で購入をした。結果として、スワンナプームでのラウンジ利用ができた。乗り継ぎの間に食堂でパッタイを食す。うまい。

 シェムリアップに到着間際、なんとか覚醒して、遠くの方に寺院らしきものを眺める。せっかくの窓側の席を十分に活かしきれなかった。飛行機をタラップで降りると、徒歩でターミナルへ移動する。空港でまずはビザの取得を。左端のカウンターでパスポート、入国カード、証明写真、申請費用20ドルを渡し、横に並んだ係員がそれらを右へ右へと渡して処理を進めてゆく様を眺める。最終的に右端のカウンターで名前が呼び出され、無事に貼り付けられたビザを受け取る。今回は写真を用意してきたが、写真がなくても5ドルほど余分に払えばビザをいただけるらしい。

  ネットで見つけたゲストハウスの名前は、THE CITY。1泊2ドルのドミトリー宿泊でも空港送迎を無料でつけてくれる、非常に良心的なゲストハウスだ。その上、日本語を話すオーナーが常駐し、水のリフィルも無料だそうだ。都会的要素が一つも無いであろうことは想像に易いが、この際そんなことはどうでもいい。到着ロビーを出ると、私の名前を持ったカンボジア人が迎えてくれた。
 トゥクトゥクに乗り込むと、生暖かい風と舞い上がった砂埃が交互に顔を舐める。先進国の規制に追いやられてやってきたディーゼル車は喜びの黒煙を上げて走っている。東南アジアにやってきたことを実感する。
 30分ほどで到着した宿は、黒と緑が基調のリゾートの匂いのする建物だ。前庭には木漏れ日に照らされたビリヤード台も置いてある。ほどなく主のMr.ベンが現れ、説明をしてくれた。ドミトリーの仲間は、中高年の台湾人のおばさんと、私と同世代の上海の女性であった。部屋に入るなり歓迎の会話が始まる。2人ともおしゃべりが好きなようだ。生乾きの匂いが残り、日本に照らせばおよそ快適とは言えない部屋だが、「2ドルにしては」という前置きをつければ十分に快適な宿だ。2段ベッドの下段に荷物を広げ、2晩の居所を確保する。
夕方には他に3人の日本人がチェックインする予定で、男性1人旅と、母子の2人旅だから、皆で一緒に夕食に行けばいいじゃないかと提案を受けた。

ぼんやりとしか予定を立てていなかった私は、ひとまず街中へ出る。レンタル自転車も、1泊2ドルに含まれている。いまにもこわれそうな自転車は、前輪のブレーキが全く効かなかった。景色を眺めながら走るスピードにブレーキは必要ないと割り切り、市場や民家沿いを、足を着けば止まれる速度で走った。原色鮮やかな市場は活気が溢れ、未舗装路に並ぶ民家では犬と子供が遊んでいる。気づけば昼食の時間となり、食事を兼ねて一緒に観光する仲間を探すため、日本人がよく訪れるという、タケオゲストハウスに併設されたレストランに向かうことにした。
ゲストハウスに近づくと早速日本人らしき女性とすれ違った。軽く挨拶を交わしてからレストランを覗くと、日本人男性が食事をしていた。昼食をご一緒しながら話をすると、彼は風邪を引いてしまい、宿に引きこもっているところだという。そして、先ほどすれ違った日本人を含め、数人がこの宿を訪れ、同じく仲間を探していて、宿の宿泊者も戻ってくるであろう9時ごろに再集合すると言う情報を得た。ひとまず夜までは独りで廻ることになりそうだ。

昼食を終え、せっかくだから自転車でアンコールワットでも行こうかと考えながらぼんやり走り出すと、並びの貸し自転車店に日本人とおぼしき人影を見つけた。この人も自転車でアンコールワットにいくのではないか、その読みは的中し、2人で7km先のアンコールワットへ向けて走り出した。一人では確実に心細く、またさみしくなる距離であり、仲間ができたのは本当にありがたい。自転車に乗りながら会話は弾み、話している間にアンコールワットに到着した。そこから小回りルートを進み、タケオ、バイヨンなどを回る。再びアンコールワットに戻るころにはすでに20kmほど走っており、もともとボロかった自転車に異常が現れ始める。後輪がギシギシと音を立て、アンコールワットから街中へ戻る道、25kmほどの地点で、ついに後輪が動かなくなる。シャフトが折れたようだ。
16時にはホテルに集合しなければならないという同行者と別れ、独り自転車を押しながら宿へ向かうが、その重さに途中で断念し、バイクタクシーに無理やり自転車を載せてもらって宿まで戻る。ベンさんに事情を話したところ、修理代は、元々壊れかけだったと言うことで免除していただいた。

残る2台のうちの1台を再び借りて、またブラブラと街に出る。すると、昼にタケオゲストハウスの前ですれ違った日本人女性の姿が見えた。
せっかくなので夕食に誘い、今日の夕食は私、シオン君、タロウとタロウママ、5人でとることになった。
タロウママの提案でBBQ食べ放題の店にはいると、ジンギスカン鍋としゃぶしゃぶ鍋の合いの子のような鍋をつかうスタイルで、生焼けも防げてスープに出汁が出て一石二鳥の美味しさだった。日本でもこのスタイル流行らないだろうか。スイーツもココナッツミルクが効いていてなかなかおいしい。夕食後はナイトマーケットに繰り出し、9時には再びタケオゲストハウスを目指す。

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